自己託送とは?メリット・デメリットも。厳格化でどう変わる?

エネルギー
  • 自己託送ってなに?
  • メリット・デメリットは?
  • 厳格化でどう変わる?

そんな人に向けて、自己託送制度について調べてみました!

自己託送を計画している人は是非参考にしてくださいー!

自己託送制度とは?

自己託送制度とは、自家用電気工作物を維持し、及び運用する者が、当該自家用電気工作物を用いて発電又は放電した電気を一般送配電事業者が維持し、及び運用する送配電ネットワークを介して、当該自家用電気工作物を設置する者の別の場所にある工場等に送電する際に、当該一般送配電事業者が提供する送電サービスです。

(出典)総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会

えねる大佐
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では、一体なにが自家用電気工作物に該当するのでしょうか。

自家用電気工作物とは

自家用電気工作物とは、一般用および電気事業の用に供する電気工作物以外の電気工作物を指します。具体的には、以下のようなものが含まれます。

  • 高圧または特別高圧で受電する事業所の電気工作物:これには、工場やビルなどが含まれます。
  • 構外にわたる電線路を有するもの:これは、電線路が建物の外部に延びている場合を指します。
  • 小規模発電設備以外の発電設備を有するもの:例えば、50kW以上の太陽電池発電所や、工事現場等で使用する10kW以上のディーゼル発電機などが該当します。
えねる大佐
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自家用電気工作物は、一般用電気工作物よりも大規模で電圧も高くなり、危険性が高い電気設備となります。そのため、運用する設備の電圧に応じて、電気主任技術者による維持・管理・運用が必要となります。

メリット・デメリット

メリット

  • 直接再エネ電力を調達できる:電気の使用場所に遊休地がない場合でも、遠隔地にある自社や関連企業などの施設内に再エネ発電設備を設置し、そこから自社工場などの事業所に電力を供給することができます。
  • 電気料金を削減できる:自己託送の場合には、あくまで「自分で作った電気を使っているだけ」になりますので「再エネ賦課金」はかかりません。
  • エネルギーの脱炭素化を推進できる:自己託送により、再エネ電力の導入が増えることで、企業のエネルギーの脱炭素化を推進することができます。

デメリット

  • 自社で再エネ発電設備の設置/運用が必要:自己託送を行うためには、自社で再エネ発電設備の設置と運用が必要となります。
  • 電力需給計画の提出義務とインバランスリスクがある:自己託送を行う場合、電力需給計画の提出が義務付けられ、また、供給と需要のバランス(インバランス)を取るリスクがあります。
  • 託送料金が発生する:既存の送配電事業者の送配電システムを使用するため、託送料金が発生します。
  • 不足分の電力を調達する必要がある:自己託送では、発電量が電力需要を満たさない場合、不足分の電力を他から調達する必要があります。

制度見直し

自己託送制度は、2013年に制度化されました。そして、需要家が遠隔地等から再生可能エネルギー電気を直接調達できるようなニーズが高まるなど、再生可能エネルギー発電設備の更なる導入拡大を目指すため、2021年度に自己託送制度を見直しました。自家用発電設備を維持し、及び運用する者が自己託送を利用するにあたっては、その送電先は当該者又は当該者と経済産業省令で定める密接な関係(資本関係があること等)を持つ者である必要がありますが、資本関係等がない者についても、組合を設立し一定の要件を満たすことで密接な関係を持つとみなし、自己託送を可能とする規定を新たに設けることとしました。

えねる大佐
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しかし、2023年12月26日に「要件厳格化」と「当面の間の受付停止」が、資源エネルギー庁から発表されています。これは、再エネ賦課金の免除を目的として、本来の自己託送の目的にそぐわない導入方法が行われる例が増加したため、要件を厳格化することになりました。

要件厳格化

自己託送の要件厳格化については、以下の4つの案が資源エネルギー庁から示されています。

  1. 他者が開発した発電所を借りて、名義上の管理責任者として行う自己託送は、自己託送の対象外にする。
  2. 発電所の維持や運用を他者に業務委託している場合、自己託送の対象外にする。ただし、この案については、厳しすぎる制限になりかねないため、まだ議論の余地があるとされています。
  3. 余剰電力分を送電する場合にのみ、自己託送の対象とする。この案についても、厳しすぎる制限になりかねないため、まだ議論の余地があるとされています。
  4. 電気を使用する施設内で他者に電気を共有する場合には、「密接な関係」であることを要件に入れる。
えねる大佐
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これらの要件厳格化は、自己託送の制度趣旨に反し、実態としては他者から電気を調達し他者に供給していると解される案件が増加したため、要件を厳格化することになりました。

受付け停止

自己託送の新規受付は、2024年1月1日から当面の間停止されています。これは、制度の趣旨に反する自己託送が増えていることを踏まえ、要件を厳格化するための措置です。

えねる大佐
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しかし、具体的な再開の日程については、現時点では公表されていません。資源エネルギー庁は、要件の厳格化についての詳細が定まるまでの間、新規申し込み受付を停止するとしています。

まとめ

自己託送制度は、再生可能エネルギーの導入拡大を目指すための重要な制度です。この制度を活用することで、企業は自家用電気工作物を用いて発電した電気を、一般送配電事業者のネットワークを介して、自家用電気工作物を設置する者の別の場所にある工場等に送電することが可能となります。

しかし、自己託送制度の適用には、その詳細な内容と適用条件を把握することが必要です。また、最近では制度の趣旨に反する自己託送が増えていることから、新規申し込み受付が当面の間停止されており、要件が厳格化される予定です。

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