2021年1月13日から発電設備を電力系統につなぐ新たな方法としてノンファーム型接続が導入されました。
でも、複雑でよくわからないという方も多いのではないでしょうか?
この記事ではノンファーム型接続の制御対象と制御方法について簡単に説明します。
電気を送れる量は決まっている
発電設備で作った電気は電力系統(送変電設備)を通じて家庭、学校、工場などの電気を使うところ(需要)に届けられます
しかし、送変電設備で送ることができる容量は決まっています。
電力系統に発電設備が多くつながっていて、既に容量に空きがない場合、風力発電などの発電設備をつなげるためには、電力系統の増強が必要になります。
増強すると電力系統の容量が増えて発電設備をつなぐことができるようになりますが、多額の費用と時間が必要になる問題が発生しました。
そのため、コスト面から事業採算性が見合わず再生可能エネルギーが普及しない問題にもつながりました。
容量を使い切っていない
これまで、電力系統への接続は公平性・透明性の観点から、発電設備をつなぐ契約(接続契約)を申し込むことによりあらかじめ電力系統の容量を確保することになっていました。
接続契約を申し込んだ順で容量を確保する従来からのルールを「先着優先ルール」といいます。
先着優先ルールにより容量に空きがなくなった電力系統でも、実際は容量いっぱいに発電されていない場合があります。
例えば、電気をつかう量(需要)が少なく発電設備がフル稼働する必要がなかったり、天気の状況により太陽光発電や風力発電がフル稼働していない時は容量いっぱいに発電されていません。
つまり、常に電力系統の容量を100%使い切っているわけではないことから、容量に空きがある時間帯があります。
そのため、既存の電力系統を上手に活用する方法が検討されてきました。
ノンファーム型接続とは
前述したとおり、従来の先着優先ルールでは、あらかじめ電力系統の容量を確保する接続方法「ファーム型接続」(英語firm:しっかりした、強固な、堅固な)で運用していました。
これに対し、あらかじめ電力系統の容量を確保せずに接続する方法「ノンファーム型接続」(英語non-firm)といいます。
電力系統の容量を確保していないため、ノンファーム型接続は系統の容量が空いているときに発電できますが、空いていないときは発電出力が制御されることが電力系統につなぐ条件となります。
電力系統の分類
電力系統は大きく分けて、基幹系統、ローカル系統、配電系統の3つに分類することができます。
■基幹系統
各エリアの上位2電圧階級の系統
(例)東京エリアでは500kV、275kVが該当します。
■ローカル系統
基幹系統より下位の電圧階級の系統で配電系統として扱われない系統
(例)東京エリアでは154kV、66kV系統の特別高圧が該当します。
■配電系統
高圧6.6kVと低圧の電圧階級が該当します。
ノンファーム型接続適用の拡大
■2021年1月13日
・電力系統に空きのない基幹系統にノンファーム型接続が適用
・電力系統に空きのない基幹系統以下につながる発電設備はノンファーム型接続が適用。ただし、10kW未満の低圧電源は除く
■2022年4月1日
・電力系統の空きの有無にかかわらず基幹系統につながる発電設備はノンファーム型接続が適用
■2023年4月1日
・ローカル系統もノンファーム型接続が適用
上記の変遷より、今後電力系統につなげる発電設備はノンファーム型接続が適用されます。ただし、10kW未満の低圧電源は除きます。
ノンファーム型接続適用系統・適用電源
先程ご説明したとおりノンファーム型接続の適用系統は段階的に適用範囲が拡大され、現在の適用状況は以下のとおりです。
ノンファーム型接続適用系統
・基幹系統
・ローカル系統
ノンファーム型接続適用電源
・10kW未満の低圧を除く全ての電源
適用系統
ノンファーム型接続が適用される系統のことをノンファーム型接続適用系統といいます。
これは、基幹系統、ローカル系統が混雑したときは発電設備の出力制御することで混雑を解消できることを示しています。
また、出力制御により混雑を解消できるため、発電設備を系統につなぐ場合、基幹系統とローカル系統の増強工事は不要です。
一方、配電系統の送配電設備(配電用変圧器含む)の空き容量が不足する場合は、配電系統の増強工事が必要となります。
適用電源
ノンファーム型接続が適用される電源をノンファーム型接続適用電源といいます。配電系統につながる発電設備であっても、発電することで上位系統である基幹系統やローカル系統の混雑の原因となってしまいます。
そのため、配電系統につながる電源も基幹系統やローカル系統が混雑の原因になることから、ノンファーム適用電源として取り扱われます。ただし、出力予測や制御が困難な10kW未満の低圧は除かれています。
ノンファーム型接続の制御対象
ノンファーム型接続の制御対象は基幹系統混雑とローカル系統混雑に分けられます。
基幹系統
制御対象
基幹系統が混雑した時は下図のとおり基幹系統~ローカル系統につながっている発電設備が出力制御されます。
必要に応じて配電系統(高圧以上)に拡大とされていますが、これは高圧電源が原因で基幹系統の混雑が発生するなど、制御対象を配電系統に拡大することで円滑に発電設備をつなげるようになる場合は各一般送配電事業者の判断で拡大となります。
制御方法
制御方法は再給電方式(一定の順序)により発電設備を出力制御します。詳細は後ほど説明します。
ローカル系統
制御対象
ローカル系統が混雑した時は下図のとおりローカル系統~配電系統につながっている発電設備が出力制御されます。ただし、10kW未満の低圧電源は除きます。
制御方法
再給電方式(一定の順序)の出力制御順に基づく制御方法により行われます。
ノンファーム型接続の制御方法
基幹系統、ローカル系統のいずれにおいても混雑した場合は再給電方式(一定の順序)の順序により出力制御されます。
下図のとおり、まずは「①調整電源」をメリットオーダーで出力制御します。それでも混雑が解消されない場合は②「ノンファーム型接続の火力発電などの電源」から⑥「ノンファーム型接続の地域資源バイオマス(出力制御困難なもの)及び長期固定電源のす津力制御」の順番で出力制御していきます。
もし、基幹系統とローカル系統がどちらも混雑した場合はローカル系統から先に混雑処理することが整理されています。
(出典)再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第48回)資料1
(出典)再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第48回)資料1
メリット・デメリット
メリット
「低コスト」「工期短縮」
発電設備を電力系統につなげるとき、電力系統の容量に空きがない場合、設備を増強する必要がありました。
増強には多額の費用と長期間の工期が必要であることから、風力発電などの発電設備を新設する障壁となっていました。
ノンファーム型接続が適用されたことにより、基幹系統とローカル系統は増強が不要となり、低コストかつ工期も短縮できることとなりました。
デメリット
「出力制御される」
ノンファーム型接続は電力系統が空いている時間帯は発電できますが、同じ電力系統につながる発電設備が最大の電力を系統に流した場合は、電力系統の容量に空きがなくなり、出力制御されることとなります。
事業採算性に影響するため、ノンファーム型接続による出力制御も見込んだ事業計画を立てる必要があります。
まとめ
これまで説明したノンファーム型接続で知っておきたいポイントを以下のとおりまとめています。
※本記事の情報は投稿した時点のものであり、閲覧されている時点で変更されている場合がございます。あらかじめご承知おきください